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必ず悩む、抗がん剤のあの疑問

はじめに

今回のテーマは『必ず悩む、抗がん剤のあの疑問』についてのお話です。
抗がん剤がテーマになっていて、がんのペットと暮らしているご家族に向けた記事になります。

ペットの抗がん剤治療をやった方がいいのかな?
抗がん剤ってしんどいイメージあるし、しんどい中、寿命を伸ばすのもかわいそう。

このようにペットの抗がん剤治療をするか迷われている方の疑問を解決して行きたいと思います

参考になれば嬉しいです。最後まで見ていって下さい。

抗がん剤治療とは

がん治療の3本柱

「抗がん剤治療とは?」という話ですが、前提として抗がん剤はがん治療の一つの手段に過ぎません。
抗がん剤を含め、がん治療を行う上で、選択される代表的な治療法は3つあります

がん治療の3本柱として有名ですが、
まずは『がん』といえば誰もがイメージする手術、次に見えないが故にどことなく怖いイメージがある放射線、そして今回のテーマである抗がん剤です。

抗がん剤はこれら3つの手段のうちの1つに過ぎません。

それぞれ得意とする分野や、苦手とする分野が違いますが、仲間分けをすると手術と放射線は仲間で、抗がん剤だけ仲間はずれになります。

それはこの3つの治療法の中で抗がん剤は少し特殊な役割を果たしているからです。
では他のふたつとどう違うのでしょうか?

手術・放射線治療の役割

手術や放射線治療は

一箇所をピンポイントに攻撃する治療で、皮膚にできたシコリや鼻の中に発生したガンなど一ヶ所に限定されるものは手術や放射線治療が適応となります。

こういったピンポイントでガンを倒す治療法を『局所治療』と呼びます。

抗がん剤治療の役割

一方で抗がん剤は血流に乗せて全身へ届ける治療法なので、白血病やリンパ腫のような血液のがん、すでにリンパや肺に転移してしまっているがんで適応となります。

こういった全身に働きかけてガンをやっつける治療法を『全身治療』と呼びます。
抗がん剤の最大の特徴はこの『全身治療』です。

血液のがんや全身に転移しているがんに対して、重宝される治療法ではありますが、
全身に効くが故に、正常な部分にも攻撃が当たるので、
それが抗がん剤の副作用として問題となります。

では、抗がん剤の副作用とはどのようなものがあるのでしょうか?

どんな副作用があるの?

分裂してる細胞を狙う

抗がん剤の標的となるのは分裂している細胞です。
分裂が盛んな細胞ほど抗がん剤によく攻撃されます。
分裂が盛んな細胞とはどのようなものがあるのでしょうか?

まずはがん細胞です。
悪いがんほどたくさん分裂しています。

抗がん剤ががんに効くのはがんが分裂している細胞だからです。
抗がん剤を投与すると、がん細胞は破壊されます。
ただ、抗がん剤で破壊されるのはがん細胞だけではありません。

抗がん剤治療をすると吐いたり、毛が抜けてしまうイメージがありますよね?

あれも抗がん剤が分裂する細胞を攻撃するという特徴から起こることなのです。
正常な細胞の中にもがん細胞と一緒で、常に分裂しているものがいます。
それが毛根と腸の粘膜と血液の細胞です。

抗がん剤を投与すると、これらの細胞は攻撃を受け、破壊されます。
一般的に起こる抗がん剤の副作用はこれらが破壊されることで起こります。
これらが破壊されるとどういう状態になるのかを順番にお伝えします。

まずは毛根からお話しします。

毛根

毛根が攻撃されたらどうなるかについてです。
医療ドラマを見ていると、抗がん剤を使うと毛が抜けるイメージがありますよね。
犬や猫も同じように毛がなくなってしまうのではないかと思われている方も多いかと思います。

実際は人のようにすごく抜けるというわけではなく、ほとんどの犬や猫では気にならない程度で収まります。

しかし、犬種によってはかなり抜けてしまう子もいるので、そこのお話をしていきたいと思います。

毛周期について

毛周期について簡単にお話しします。
毛は常に伸びているわけではなく、毛は成長期、退行期、休止期というサイクルをぐるぐる回っています。

抗がん剤を投与すると、成長期の毛がダメージを受けて伸びなくなります。
これによって新しい毛が生えてこなくなり、抜け毛が目立つようになるわけです。

動物の場合、幸いなことに人と違って、このサイクルがゆっくりで休止期の毛が多く存在するため、抗がん剤を使っても、あまり抜け毛が目立ちません。

抜け毛が目立つ犬種

ただし、犬種によっては成長期の割合が多い犬種がいます。
それが巻き毛を持つ、トイプードルやミニチュアシュナウザーです。

このような巻き毛を持つ犬種たちは直毛の犬種に比べ、脱毛が顕著に起こるという報告があります。抗がん剤治療中の犬150匹を調べた研究では、
抗がん剤によって脱毛を示した犬は全体の19%となり、さらに毛質を調査したところ、直毛の犬よりも巻き毛の犬の方が、脱毛していたというデータがあります。

脱毛による副作用

脱毛は動物にとっては何も気になるわけではなく、見た目の問題だけです。

見た目だけの問題と言っても、一番目につくところなので、
『あぁ抗がん剤をやっているなぁ』と改めて認識させられるかもしれません。

辛いかもしれませんが、元気に生きる時間を伸ばすためには抗がん剤治療は実施していくべきで治療中は我慢していただく必要があります。
抗がん剤を終了するとまた毛は生えてきます。

少しの辛抱なので、頑張りましょう!

腸粘膜

腸の粘膜も絶えず分裂を繰り返しています。
食べ物が腸を通過すると、粘膜はその刺激によってこのような感じにポロポロと剥がれ落ちていきますが、すぐに新しい粘膜が作られます。

このように剥がれては作られてを繰り返し、常に新しい細胞で覆われています。

しかし、抗がん剤の攻撃を受けてしまうと、腸の粘膜は新たに作られないため、ボロボロに傷んできます。

そうすると、下痢をしやすくなったり、吐きやすくなったり、食欲が落ちてしまったりという症状が出てきます。こういった症状には吐き気止めや下痢止め、食欲増進剤などの薬を用いて治療を行っていきます。

薬を併用することで副作用はある程度抑えることができます。

最後に血液の細胞についてお話ししていきます。

血液の細胞

骨髄の役割

最後は血液の細胞です。
血液の細胞は骨髄と呼ばれる場所で絶えず作られています。

骨髄は骨の中にあります。
骨髄は工場のような場所で年中無休フル稼働して、血液細胞を生産し続けています

血液の細胞というのは大きく分けて3種類に分かれます。
それが赤血球、血小板、好中球の3つです。
工場に例えると、3種類の商品を作っているようなイメージです。

血球の消費期限

そして、これらの商品には消費期限があります。
赤血球の消費期限は4ヶ月ほどありますが、好中球はわずか4時間から8時間程度しかありません。
そのため、好中球は腸粘膜と同様に作られては廃棄されるのを絶えず繰り返しています。

さて、抗がん剤はこのような常に稼働している場所を攻撃する薬でしたね。
抗がん剤を投与すると、この骨髄という工場が丸ごと破壊されます。
工場が破壊されると、供給ラインが途絶えてしまいますので、血液の細胞は減ってしまいます。

ここで重要になってくるのが、消費期限です。
赤血球は工場が壊れても4ヶ月間備蓄していられるので、そんなに影響は受けません。
一方で、
好中球は4時間で消費期限が切れてしまうので、工場での生産ラインが途絶えるとすぐに足りなくなります。
では好中球が減ってしまうとどうなってしまうのでしょうか?

好中球が減ったらどうなる?

好中球は体にとっての警察官のような存在で、バイキンが体に侵入した時に真っ先に駆けつけ退治してくれます。

そんな警察官が減っていると、治安が悪くなりますよね?
そうなんです。好中球が減ってしまうと、免疫力が低下してしまうんです。
そのため、熱が出やすかったり、体調を崩しやすくなってしまいます。
以上が抗がん剤の副作用の解説になります。

これだけ聞くと副作用は悪いことばっかりなイメージがあるかと思いますので、
最後に副作用が決して悪いことばかりじゃないよというお話をさせて下さい。

副作用=悪いは間違い

副作用は効果が出てるサイン

抗がん剤はこのように腸の粘膜を破壊したり、骨髄を破壊して好中球を減らしてしまうのですが、こういった副作用は抗がん剤がしっかり投与できているサインでもあります。

というのも、
好中球が減ったグループと減らなかったグループで抗がん剤治療の成績を比較したところ、
減ったグループの方が明らかに生存期間が伸びていたという報告があります。

抗がん剤治療中のリンパ腫の犬50匹を調べた研究では、13匹が好中球の減少を示し、残りの37匹は変化がありませんでした。
これら2つのグループの生存期間中央値を調べたところ、好中球が減ったグループは952日だったのに対し、変化がなかったグループは282日でした。

これらのグループ間に生存期間の明らかな差が認められています。
このような報告からもあるように、抗がん剤をしっかり効かせるためには副作用があった方が良いケースもあります。

ただし、吐いたり、下痢したりというお腹系の副作用はあってもいいことが無いので、そこは薬を使って軽減させて行きます。

安易な減薬が招く悲劇

「副作用を怖いので、投与量を減らして下さい」とご家族からお願いされることもありますが、何の根拠もなく『ただ副作用が怖いから減らす』という方法では抗がん剤治療をしている意味がなくなってしまいます。

抗がん剤の投与量を20%減らすと、治癒率は50%低下すると言われています。
そのため、しっかりと効かせるためにはしっかりと投与する必要があります。
もちろん、肝臓や腎臓の機能が弱っている場合や好中球が減りすぎている場合は、投与量を減らすことはありますが、そういった場合は確固たる科学的根拠を持って減らしています。

怖いのは投与している僕らも同じです。副作用で体調崩れないかなと心配しながら投与しています。
元気にしたくて抗がん剤を投与しているのに、体調が崩れてしまうとやっぱり悲しくなります。

しかし、このように副作用と治療効果のバランスを保ちながら、ギリギリを攻めて治療していくのが抗がん剤治療のコンセプトになります。

副作用は抗がん剤が効いているサインでもありますので、全て悪いというわけではないというお話をさせてて頂きました。

じゃあ次は抗がん剤を使うと完治するのかというお話に移りたいと思います。

抗がん剤をすると完治する?

愛犬、愛猫に抗がん剤をしようか迷っている飼い主さんの中には抗がん剤でガンが治るなら、やってあげたいけど、治らないならかわいそうと考える方もいるかと思います。

抗がん剤で闘病期間を伸ばして苦しむ期間が伸びないだろうか、不安ですよね?

愛犬、愛猫に抗がん剤をしようか迷っている飼い主さんの中には抗がん剤でガンが治るなら、やってあげたいけど、治らないならかわいそうと考える方もいるかと思います。
抗がん剤で闘病期間を伸ばして苦しむ期間が伸びないだろうか、不安ですよね

では抗がん剤で完治は望めるのでしょうか?

抗がん剤を投与する意義

結論から言いますと、ペットのがん治療において完治は望めません。

じゃあ、抗がん剤意味ないじゃんって思いますよね?
それは違います。
抗がん剤を使うと元気でいれる期間が延ばせます。

ん?抗がん剤って副作用があるって言ってたじゃん、矛盾してない?

副作用もありますが、治療効果もあります。
がんが体の中に存在していると、それだけで全身性の炎症が起こったり、血栓ができやすくなったり、食欲の低下や体調悪化の原因となります。

抗がん剤を使用することで、がんの進行を止めたり、あるいは小さくすることができます。
これによって動物は本来の体調を取り戻し元気になります。
この期間を維持することが抗がん剤の目的となります。
決して、抗がん剤によって辛い闘病生活を延長させるものではありません。

繰り返しになりますが、抗がん剤治療では完治を目指すことはできませんが、元気でいられる期間を伸ばすことはできます。

私たちが想像する抗がん剤のイメージはあくまで副作用の部分であり、そこをいかに抑え込むかが獣医師の腕なのです。

定期的な通院で、使う抗がん剤とその子の相性を見極め、副作用が出そうなタイミングで先手を打ち、早めに対処する。
そうしていくことで副作用を極力減らして、元気に生きられる期間を伸ばすことができます。

最後に

では、今回のまとめになります。

まとめ
  • 局所治療である手術や放射線と異なり、抗がん剤治療は薬を全身に届ける全身治療です。
  • 抗がん剤は分裂が盛んな細胞を攻撃します。
  • そのため副作用は毛根や腸粘膜、好中球が標的となりやすく、毛が抜けたり、下痢したり、免疫力の低下が起こりやすいです。
  • 副作用が出ているということはしっかり投与できてるサインでもあります。
  • 副作用の全てが悪いわけではないことは知っておきましょう。
  • 抗がん剤だけではがんの完治は目指せません。
  • 抗がん剤は完治を目指す治療ではなく、元気に生きれる期間を延ばす治療です。

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