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犬と猫の頭蓋内圧上昇 ~5つの症状~

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頭蓋内圧上昇と症状について

獣医療の発展に伴い、動物の平均寿命が伸びています。
こうした動物の高齢化は神経系や腫瘍性疾患による脳のトラブルを増加させます。
今回は犬と猫の頭蓋内圧が上昇した際に認められる代表的な5つの症状を紹介します。

症状① 意識レベルが下がっている

意識レベルとは

意識レベルの低下は「ぐったりしている」という伝え方で、完結されがちですが、意識レベルの低下は重篤度別に用語を分けて使用されています。意識レベルの低下は傾眠→昏迷→昏睡の順番で重篤になります。

ぐったりしているだけでなく、今の状態がどの段階にあるかを理解することで、事の重大さを客観的に評価でき、他者へ伝達することが可能になります。

意識障害レベル 説明
清明(せいめい) 周囲からの刺激に対して正常に反応する状態
傾眠 覚醒しているが、周囲からの反応が低下しており、反応が鈍い状態
昏迷 意識はないが、痛みを伴う強い刺激に対してのみ反応する状態
昏睡 意識はなく、痛みを伴う刺激に対しても無反応な状態

この意識障害レベルの分類ってわかりづらくて厄介ですよね。
私はこの意識障害レベルを『授業中の学生の態度』で覚えています。

  • 清明:しっかり聴いている学生
  • 傾眠:半目でカクンカクンしている学生
  • 昏迷:体を揺すられると目が覚める学生
  • 昏睡:体を揺すられても起きない学生

意識障害はなぜ起こるのか

意識は大脳皮質(前脳)と脳幹に存在する上行性網様体賦活系(ARAS)の働きによって維持されています。
意識レベルが低下している時にはこれらどちらかが障害を受けていると考えられます。
脳神経検査や意識レベル低下以外の神経症状を観察し、前脳疾患なのか脳幹疾患なのかの鑑別を行います。

では、こうした前脳や脳幹が障害される原因は何があるのでしょうか?
これは脳障害を引き起こす原因がどこにあるかによって『一次性脳障害』と『二次性脳障害』に大別されます。

一次性脳障害の機序

脳外傷、脳腫瘍、炎症性疾患、脳梗塞、脳出血、てんかん発作などの脳障害が発生した時に、脳の血流量が減少します。
これにより、脳細胞はエネルギーを産生することができなくなることで、細胞の壊死やアポトーシスが起きてしまいます。
頭蓋内圧が上昇すると意識レベルが低下するというのはこの一次性脳障害によるもので、流れとしては『頭蓋内圧が上昇→脳血管が圧迫を受ける→大脳の障害を受ける→意識レベルが低下』といった感じです。

二次性脳障害の機序

こちらは今回のトピックとは外れるため簡単に説明しますが、低血糖や心拍出量の低下、電解質の異常など、全身性の疾患が原因で脳障害を受けるものを呼びます。

小まとめ
  • 意識レベルを表す用語と重篤度を知っておく
  • 意識は大脳と脳幹によって維持されている
  • 脳障害の原因により一次性脳障害と二次性脳障害がある
  • 頭蓋内圧上昇による意識障害は一次性脳障害によるもの

症状② 瞳孔の大きさが左右不対称

瞳孔の調節機能とは

瞳孔を構成する筋肉

瞳孔は副交感神経支配を受ける『瞳孔括約筋』交感神経を受ける『瞳孔散大筋』による二重支配を受けています。

瞳孔括約筋は輪状筋で輪っかを描くように走行しています。瞳孔を収縮させる時はこの瞳孔括約筋が収縮することで絞られます。
一方で、
瞳孔散大筋は放射状筋で放射状に走行しています。瞳孔が散大する時はこの瞳孔散大筋が収縮し、瞳孔を引き伸ばします。

瞳孔は光の量を調節している

瞳孔は光を浴びた時に収縮します。
これは光の刺激を網膜にある視神経がキャッチしてから脳へ運ばれて、動眼神経の中にある副交感神経が瞳孔括約筋を収縮させることで起こっています。
このようにして動物の体は眼球内に入ってくる光の量を調節しています。

左右不対称が意味すること

瞳孔の左右が不対称の場合、瞳孔を動かすまでに至る経路で異常が起きていると考えられます。
すなわち、光刺激を受けてから瞳孔括約筋を収縮させるまでにある神経経路
①視神経(第Ⅱ脳神経)
②脳
③動眼神経(第Ⅶ脳神経)
で何かしらのトラブルが起こっていると考えられます。

脳障害による瞳孔不同が起こっている時は脳ヘルニアによるトラブルが挙げられます。

小まとめ
  • 瞳孔は瞳孔括約筋と瞳孔散大筋により大きさを変える
  • 瞳孔が動くまでの経路は『網膜→視神経→脳→動眼神経→瞳孔』

症状③ 瞳孔対光反射が陰性

瞳孔対光反射を確認する方法

ライトで片方の眼を照らしてみましょう。正常であれば、照らした側の眼は縮瞳します。
そして、そのまま反対の眼を見てみましょう。
ライトを当ててない方の眼も連動して縮瞳しているはずです。
これが『瞳孔対光反射』というものです。

一方で、以下のような場合だと陰性と判断します。

  • 光を当てている眼が縮瞳しない
  • 光を当てた方は縮瞳したが反対の眼は変わらない

対光反射が陰性になる時

これは前項の瞳孔不同の話と同様で、①視神経(第Ⅱ脳神経) ②脳 ③動眼神経(第Ⅶ脳神経)のどこかに異常が出ているサインとなります。

小まとめ
  • 片眼だけにライトを当ててみる
  • 当てた側も反対の眼も縮瞳すれば正常

症状④ てんかん発作

てんかん発作の原因

てんかん発作は大脳の異常を疑う典型的な症状です。
てんかん発作は大脳やその一部が異常な興奮を起こすことで生じる状態を言います。
てんかん発作の原因は①特発性てんかん ②症候性てんかん ③反応性発作の3つに大別されます。

種類 説明
特発性てんかん CT検査、MRI検査で病変が脳に存在しないが発作だけが繰り返し起こる状態
初発発作が6ヶ月~6歳齢で多い
症候性てんかん CT検査、MRI検査で肉眼的に脳に病変が存在している状態
頭蓋内圧を上昇させる脳腫瘍、脳出血などが該当する
反応性発作 全身性の代謝障害や中毒で発生する発作
低血糖や肝性脳症、低カルシウム血症などが該当する

てんかん発作が起こった時の対処法

顔まわりは触らない

発作が起きた時は本人も意識を失っていることがあります。心配なのは分かりますが、手を出すと噛みつかれて怪我をする恐れがあるので、なるべく顔周りは触れないようにしましょう。

動画を撮る

動画をしっかり残しましょう。
ポイントは発作中の様子、発作後1~2分の様子はしっかりと動画にしておきましょう。これによってどうのような発作が起こっているのかや本当に発作がなのか(失神との鑑別など)が可能になるためです。
プラスαで可能であれば、発作が起こる直前の様子も残しおくと良いでしょう。

小まとめ
  • てんかん発作は3つの原因に分けられる
  • 発作中は顔まわりは触らない
  • 動画は発作前、発作中、発作後数分を狙って撮る

症状⑤ クッシング反射

クッシング反射は頭蓋内圧の急激な上昇に対する生理的な反応で『徐脈』、『高血圧』、『呼吸不整』が見られます。

頭蓋内圧が上昇すると脳内の血管が圧迫を受け、脳血流量が低下します。
すると、血圧に関わる神経ニューロンであるRVLMニューロンへの血流供給が弱まることで、動脈血圧が急上昇します。そして、血圧の上昇により動脈圧受容器を介した反射で心拍数が低下し、徐脈になります。

小まとめ
  • クッシング反射は『徐脈』『高血圧』『呼吸不整』
  • 徐脈は高血圧の圧受容器反射で起きている

まとめ~対処法~

頭蓋内圧が上昇した時に見られる代表的な症状を5つご紹介しました。発作のような明らかに異常に気づく症状から、瞳孔の左右不対称という薄い反応まで幅広くご紹介しました。このような症状が認められた場合は早急に病院に連れて行き、脳圧を下げる治療が必要になります。

代表的な薬剤は『マンニトール』や『グリセオール』

これらの薬剤を静脈から投与し、脳圧を下げます。
発作などの強い神経症状が出ている場合は抗発作薬や状況によってはプロポフォールなどの静脈麻酔薬を使用するなどで対症療法を行います。

本記事の参考図書

鯉江洋 監修 : 犬と猫のフィジカルアセスメント, 緑書房, 2020
岡田泰伸 監訳 : ギャノング生理学 原著24版, 丸善出版, 2014, p204-230

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