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ちょっと待った!「血小板少ない」=病気は早すぎない?

とある診察室にて…

かかりつけ医

〇〇ちゃんの血液検査の結果がおかしなことになってまして…
ここです、血小板の数が極端に少なくなっています。

本当だ、血小板の数だけ極端に低くなってますね。
これって問題なんですか?

かかりつけ医

一般的に血小板が下がっている時に考えるのは3つです。
①採血時や計測機器の検査エラーがある時
②DICといって血小板が少なくなる基礎疾患がある時
③骨髄や免疫系の疾患がある時

②と③は比較的発生頻度が少ないので、
まずは検査エラーの可能性を考慮し、もう一度採血させて下さい。

わかりました、お願いします。
(よくわからないけど、なんだか怖い。しかも、もう一度採血するってかわいそう…)

検査機器の測定方法

血液検査機器の特徴

獣医療の血液検査機器で使用されている測定方法として『電気抵抗法』『フローサイトメトリー法』があります。
電気抵抗法は単純に血球の大きさで赤血球だ、血小板だと判別し、測定する方法です。
一方で、
フローサイトメトリー法は血球の大きさに加え、色の濃さ(RNA含有量)で血球を判別しカウントしていく方法です。

血液検査機器の特徴

【2種類の測定方法】

  • 電気抵抗法:血球の”大きさ”
  • フローサイトメトリー法:血球の”大きさ”と”色の濃さ”

犬と猫で測定方法が異なる

一般的に、犬の血小板測定には『電気抵抗法』が用いられ、猫の血小板測定には『フローサイトメトリー法』が用いられます。

ではなぜ、異なる測定方法が採用されているのでしょうか?それには犬と猫の血小板の大きさの違いが理由にあります。

犬と猫は血小板の大きさが異なる

犬の場合、赤血球と血小板の大きさは明らかに異なるため、大きさでカウントする電気抵抗法が使用できますが、猫の場合、大きめの血小板が出ることが多く、赤血球と血小板の大きさが一部重複してしまいます。
これを電気抵抗法でカウントすると、どれが赤血球でどれが血小板なのか機械が分からなくなってしまうため、フローサイトメトリー法が採用されています。

では機械はこのように赤血球と血小板を鑑別する方法で測定しているにも関わらず、血小板数が極端に下がるなどの検査エラーはなぜ生まれるのでしょうか?
それには血小板の特性が関与しています。次項では血小板の性質についてお話しします。

【小まとめ】

  • 血球の計算方法は電気抵抗法とフローサイトメトリー法がある
  • 電気抵抗法は”大きさ”、フローサイトメトリー法は”大きさ”と”色の濃さ”で測定
  • 犬では血小板と赤血球の大きさが異なる→電気抵抗法
  • 猫では血小板と赤血球の大きさが重複→フローサイトメトリー法

血小板の性質について

血小板とは

一次止血と二次止血
血小板とは止血に関わる細胞で、血管がなんらかの原因で破壊された時に活性化されます。
止血には一次止血と二次止血があります。一次止血は出血初期に起こり、二次止血が開始されるまでの一時的な止血を行います。

ざっくりとしたイメージ
イメージとしては川(血管)の堤防が決壊した時(出血時)にとりあえず簡単な土嚢を組んで作る堤防が一次止血であり、その後落ち着いたタイミングでコンクリートなどで作る頑丈な堤防が二次止血です。血小板は出血初期に作用する一次止血で主な役割を担い、活性化します。

出血から一次止血までの流れ

ここでは決壊した堤防をせき止める土嚢が組み上げられるまでの過程を解説します。

【STEP1】血管収縮
出血が起こると局所的に血圧の低下が起こります。体は血圧を維持しようと、出血部位の血管を収縮させます。そうすることで、局所に流れる血流が少なくなり出血が抑えられます。

【STEP2】vWFが仲介
血管周囲のコラーゲン(結合組織)と血小板をくっつける接着剤としてフォンウィルブランド因子(vWF)が必要になります。vWFがコラーゲンと血小板を結び付けます。

【STEP3】血小板の活性化
vWFと結合した血小板は活性化し、活性化した血小板はフィブリノーゲンという物質を足がかりにして、血小板同士の土嚢を組んでいきます。ここまでで一次止血は終了です。ここから先は二次止血となり、土嚢を取り除きつつ、整備された堤防を構築する流れへと移行します。

【小まとめ】

  • 血小板は一次止血の主体となる
  • 一次止血は土嚢、二次止血はコンクリートの堤防
  • 『出血→血管収縮→血小板の活性化』の順で一次止血が起こる

検査エラーで血小板数が下がる理由

採血と血小板

今まで、前提の話を長々と記してきましたが、ようやく話を採血のところに戻せます。

採血という行為は血管の壁に針を貫通させて、血液を吸い取ってくる行為です。そのため、体にとっては血管壁という堤防を破壊されているのと同等の行為なのです。そのため、体は出血したと勘違いを起こし、血管を引き締め、血小板を活性化させて、一次止血を行います。

そして、採血に時間がかかると、シリンジの中で活性化した血小板同士が集まって血餅として血の塊を作ります。

検査機器の特性と血小板

血小板同士が結合し、集まった状態を『凝集』と言います。血小板凝集が起こっている血液を血液検査機器で測定させるとどうなるでしょうか?

先ほど、血液検査機器は電気抵抗法やフローサイトメトリー法を用いて、血小板と赤血球の”大きさ”や”色の濃さ”の違いを利用して、測定しているとお話ししました。
血小板同士が結合し、凝集しているものはもちろん本来の血小板よりも遥かに大きな直径を持っています。そのため、検査機器は血小板を血小板として認識できなくなり、血小板数が低くなってしまうのです。

だからもう一回採血させて欲しい

血小板数が低下する病気は深刻なものが多いです。骨髄の異常や播種性血管内凝固(DIC)など、命に関わるものが紛れ込んでいます。

血小板数が低下しているのが『手技・検査機器の問題』なのか、『病気によるもの』なのかを鑑別するにはもう一度採血し直して、『手技・検査機器の問題』を除外する必要があります。

【小まとめ】

  • 採血操作で体は出血が起こったと勘違いする
  • 血小板凝集が起こると機器で正確なカウントが難しくなる
  • 検査エラーと病気の鑑別のためにもう1回採血させて

まとめ

採血は体にとっては出血が起きているのと同じことです。
体は出血に反応して、血液を固めようと一次止血を起こします。
採血がてこづったり、時間がかかる一次止血により血小板が活性化し、凝集してしまいます。
検査機器は大きさによって血球を測定しているので、凝集し大きくなった血小板の集まりを血球として認識できなくなります。
結果として、血小板数が少なくなるというわけです。

本記事の参考図書

石田卓夫 著 : 伴侶動物の臨床病理学 第3版, 緑書房, 2019

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