はじめに
今回のテーマはこちら『猫の日光浴が招く、恐ろしい病気』についてのお話です。
猫ちゃんって日光浴が好きですよね。
野良猫さんもアスファルトの上で寝転がっていることがよくあるし、
特にこの寒い時期は暖を取るために日中はベランダから差し込む光で温まる猫ちゃんたちも多いと思います。
私も猫を飼っていますが、お日様に当たりながらひっくり返っています笑
でも日光浴って、やりすぎると恐ろしい病気に発展することをご存知ですか?
今回はそんな猫の日光浴について詳しくお話ししていきます。
猫が日光浴を好きな理由
猫が日光浴を好きな理由は『健康になるから』です。
ん?さっき日光浴が恐ろしい病気になると言ってたよね?と思うかもしれません。
健康になるのはあくまで適度な日光浴に限ったお話です。
我々人間も適度に日光浴をすると気分が良くなることが多いですが、直射日光を浴びすぎるとしんどくなりますよね?
それと一緒だと思ってください。
日光浴で健康になる理由
ではなぜ、日光浴をすると健康になるのでしょうか?
それにはホルモンやビタミンが大きく関わってきます。
セロトニンの役割
日光を浴びると、セロトニンと呼ばれるホルモンが分泌されます。
セロトニンは脳内の神経伝達物質の一つで、脳の活動をサポートしています。
セロトニンが足りなくなると精神状態が不安定になって、うつ状態なったり、胃腸の動きが悪くなって、吐きやすくなります。
また人の方では味覚障害などにも関わっているという風に言われており、猫でも食欲不振の低下になりえます。
その他にも、セロトニンは『サーカディアンリズム』と言って、簡単に言うと『体内時計』の調節に関わっており、日光を浴びることで、朝と夜の感覚を体に教えています。
なので、日光を浴びずにセロトニンの分泌がうまくされなくなると、体内時計が狂ってしまって、夜中にニャンニャンと鳴き続けたり、日中にずっと寝っぱなしになることがあります。
意外と知られないことですが、猫は夜行性ではありません。
猫は『薄明薄暮性』と言って、明け方と夕暮れに最も活発になる動物です。
これは獲物であるネズミが夜行性で夕暮れから活動し始めるため、こういう習性の方が捕食しやすいからです。
例えば、まだ人間の方が寝ているのに、朝早くからニャンニャン鳴いて起こしにきたり、急に走り回って布団にダイブしてくることはないでしょうか?
こういった行動は猫が明け方に活発になるという薄明薄暮性という習性から来ています。
日光を浴びてセロトニンを出すことで、このように体調や体内時計を整えることができます。
ビタミンDの役割
セロトニン以外にも日光を浴びると、ビタミンDが合成されます。
ただ猫は他の動物に比べると元々も日光からビタミンDを合成する能力は弱いので、食事中から摂取する方が大切とは言われています。
ビタミンDはカルシウムを吸収するのに必要なビタミンで、これが足りなくなるとカルシウムをうまく取り込めなくなります。
カルシウムは脳神経の活動に関わったり、筋肉を動かしたり、骨を作ったりととても大切な役割を担っています。
血液中のカルシウムが少なくなってしまうと、ふらついたり、立てなくなったり、骨がうまく作れなくて成長不良の原因につながります。
こういったセロトニンやビタミンDを作るためには日光浴が必要で、猫は本能的にそういった日光浴を好んでいます。
日光浴のよくある勘違い
『猫 日光浴』とかで調べてもらうと色々と情報が出てくると思いますが、一つ気になるものありました。
それは紫外線で皮膚が消毒されて、『ノミやダニが繁殖しにくくなる』という情報です。
よく消臭剤とかのcmでダニを殺菌!みたいなものが流れていますが、猫に寄生するノミやダニと消臭剤で殺菌できるダニは種類が違います。
猫に寄生するノミ・ダニはネコノミやマダニと言って、肉眼で確認できるぐらい大きな寄生虫です。
一方で、消臭剤のcmで殺菌できるダニというのは『コナヒョウヒダニ』や『ヤケヒョウヒダニ』というホコリなどに混じっている小さなダニで、ハウスダストのことを言っています。
猫の寄生虫に対しては駆虫薬の投与が必要となります。
日光浴をしたからといって、猫に寄生した寄生虫は死滅しないので、勘違いしないように注意してください。
寄生虫に感染しないようにするためには完全室内飼いを徹底することと、月に1回定期的に予防薬を投与することが重要になってきます。
日光浴が招く恐ろしい病気とは
猫は日光浴が好きな動物なんですが、あまりやりすぎると病気につながることがあります。
その病気というのが、『扁平上皮癌』です。
皆さんは扁平上皮癌という言葉を聞いたことはありますでしょうか?
扁平上皮癌というの皮膚の表面の細胞がガン化したもの、『皮膚がん』の1つだと思って頂けるとわかりやすいかと思います。
紫外線は皮膚がんのリスクを上げる
よく紫外線が原因で、皮膚がんになりやすいというの聞いたことありますよね?
紫外線が強いオーストラリアでは皮膚がんになる人が増えているなんてニュースを耳にしたことがあるかと思います。
特に白猫は要注意
猫でも強い紫外線を浴びると扁平上皮癌という皮膚がんになることがあります。
特に注意しなければいけないのが、白猫です。
白猫が注意しないといけない理由は紫外線の影響を受けやすいからです。
皮膚や毛にはメラニン色素という紫外線をブロックする色素が含まれているのですが、白猫の場合、そのメラニン色素が少なく、紫外線が皮膚の奥の方まで届いてしまいます。
こういった白い部分に紫外線が当たり続けると、皮膚の細胞がダメージを受け、皮膚がんができやすくなります。
扁平上皮癌は耳の先に発生しやすく、耳の先が下の写真のようにカサブタができて溶けてくるような感じになります。
Keith A. Hnilica ; Adam P. Patterson : Small Animal Dermatology A Color Atlas and Therapeutic Guide. 4th ed., ELSEVIER, 2016, fig14-25
扁平上皮癌の治療法
このタイプのガンは皮膚の奥へ奥へと深く浸潤してくることが多く、治療法としては耳を切り落とすような手術(耳介切除)が必要になってきます。
片耳だけドラえもんみたいになっちゃうんですが、耳を切り落とすという表現をすると可哀想だと思われるかと思います。
ただ実際、この状態を放置しておくと、耳をドンドンドンドン溶かしてきます。
さらに、耳の先から血が出てきたり、膿が出てきて、本人も痛みや痒みが出てきて、すごく気にするようになってきます。
こういったある程度進行した状態になってから、耳を切除するとなると、ガンを取り残してしまうリスクがありますし、すでにリンパ節や肺へ転移してしまっていて、根治的な手術ができなくなっている可能性もあります。
こういったことから早期診断、早期治療を心がけてもらえればと思います。
扁平上皮癌を見つけるには
じゃあどうやって診断をしていくのかというと、診断には『生検』が必要になります。
生検というのは、耳の病変の一部採取し、それを顕微鏡で見る検査です。
生検に関してはこちらの動画で詳しく解説しているので、ご参考いただければと思います。
犬のシコリという風に書いてますが、猫にも共通することが多いので、気になる方はぜひ概要欄の方をチェックしてみてください。
扁平上皮癌の細胞診
扁平上皮癌の場合、このような細胞がたくさん取れてきます。
多角形で好塩基性の細胞質を有する大型細胞が多数観察されます。
この写真のように核の周囲に多数の空胞が認められることもあります。
これは私が実際に診察した猫の扁平上皮癌の細胞診ですが、典型的な細胞診画像と言えます。
このように細胞診を行なって、扁平上皮癌を疑う細胞が取れてきた場合は診断が付きますし、
あまりしっかりと取れてこない場合は、病理検査といって、耳の病変を一部切り取って調べる検査が必要となります。
- 白猫、毛が白い部分
- 日光浴が好き
- 耳の先にカサブタ
- 扁平上皮癌を疑う細胞を多数観察
こういった状況証拠を揃えた上で、診断を行い、耳の切除を検討していきます。
どうやって予防すればいい?
先ほど少し、耳を取るとか怖い話をしましたが、せっかく可愛い耳をしているのに取るのって嫌ですよね?
できる限りこうならないように予防してほしいなと思っています。
これを予防するためには、『とにかく強い直射日光を避ける』というのを徹底してください。
冒頭でお話しした通り、日光浴はある程度必要なんですが、時間を区切ったり、強い光が差し込まないように対策してあげる必要があります。
特に白猫や耳の部分が白い猫はこういった紫外線に対しての抵抗力が弱いので、
日光浴の時間を少し短くしたり、
紫外線カットの機能があるカーテンレースを使用するなどして対策してください。
最後に
では、今回のまとめです。
- 日光浴で体内時計を調節し、カルシウムを吸収する
- 猫に寄生するノミダニは紫外線では死滅しない
- 強い紫外線は扁平上皮癌のリスクを上げる
- 白猫や白い毛がある猫には紫外線対策をしてあげる
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