犬のお話

【犬猫の便検査】健康診断で持参すべき、便検査の重要性

はじめに

今回のテーマはこちら
「健康診断の時に持参すべき、便検査の重要性」というテーマでお話ししていきたいと思います。

さて、4月になると狂犬病やフィラリア予防のシーズンですね。
もしかして皆さん、ワクチン打ちに行く時、手ぶらで行ってたりしませんか?
それちょっと勿体無いかもしれません。

ワクチンを打ちに行く時、健康診断を兼ねて血液検査や超音波検査をすることは多いと思いますが、ウンチの検査はしていますでしょうか?

糞便検査は非常に簡単にできる検査であるにも関わらず、腸内細菌の動きやバランス、消化状態、寄生虫の有無など得られる情報がたくさんあります。

血液検査では肝臓や腎臓、膵臓といったこれらの臓器に対して異常がないを調べることができますが、胃腸の異常を検出するのは苦手です。
また、
超音波検査というのは臓器の輪郭や内部構造、動きを評価するのには有用ですが、腸内環境の様子を確認することはできません。

糞便検査は費用もかからず、血液検査や超音波検査では見つけられない異常を検出することができる検査です。
こういったいくつかの検査を組み合わせて、全身の状態を把握していく必要があるんですね。
今回はそんな糞便検査に関するお話をしていきたいと思います。

糞便検査でわかること

まずは糞便検査でわかることについてお話ししていきます。
動物病院では血液検査をよくされるところが多いですが、糞便検査をしっかりとやっている病院は少ないかと思います。

飼い主さんからしても、血液検査は異常値を赤字で記した数値が一覧となって表示されるので、何が悪くて何がいいのかは分かり易いと思います。
一方で、
糞便検査は顕微鏡で観察する検査なので数値化することが難しく、やや主観的な検査となるため、説明を受けてもあまりしっくり来ない飼い主さんもいるかと思います。

そんな主観的な糞便検査ですが、この検査は何を見ていると思いますか?
実はこういったものを見ています。

糞便検査で見ているもの
  • 色、固さ、臭い
  • 食べ物の消化状態
  • 腸内細菌叢(動き、バランス)
  • 寄生虫感染の有無

これはあくまで私がチェックしている項目にはなるんですが、多くの動物病院でこれらを気にしながら病気がないかを探していると思います。
では、これらの項目についてわかることをお話ししていきたいと思います。

色、固さ、臭い

まずは色、固さ、臭いについてです。
これは顕微鏡がいらないので、飼い主さんも一緒に確認してもらえればと思うのですが、
健康的なうんちというのは、以下のようなものです。

健康的なウンチとは
  • バナナみたいな形
  • チョコレート色
  • 掴んでも崩れない固さ

臭いは説明するのが難しいですが、いつもと違う臭いじゃないかっていうのを見て下さい。
異常が出てくると酸っぱい臭いであったり、血生臭いニオイがすることがあります。

こういったうんちの見た目に関するお話はこちらの別動画で詳しくお話ししているので、是非ともご参考下さい。

食べ物の消化状態

今回はお家での観察ではなく、健康診断で受診された時のことを想定してのお話ですので、顕微鏡でわかることを中心にお話ししていきたいと思います。

糞便検査でわかることとして消化状態があります。
消化状態を確認する時にポイントとなるのが、炭水化物やタンパク質、脂肪といった3大栄養素がしっかりと消化されているかを見ています。

特にタンパク質の元となる筋肉片や脂肪がたくさんウンチ中に観察される場合は、
消化がうまくできていない可能性が高いです。

こういった場合は胃腸に問題があるのか、食べているご飯に問題があるのか、そういったものを見極めていく必要があります。

腸内細菌叢(動き、バランス)

次は腸内細菌叢です。
細菌叢というのはいわゆる腸内細菌の悪玉菌や善玉菌のバランスのことを言います。

細菌叢というのは腸内の環境を反映しており、健康状態を維持する上でとても重要な役割を担っています。

ラセン菌や芽胞菌と呼ばれるもの、長桿菌と呼ばれるものは健康な糞便中にはあまり出てこない細菌で、悪玉菌の一種として考えられます。

まぁ、厳密にいうと、これらの全てが全て悪玉菌というわけではなく、
こういった形をしている細菌の一部が病原性
を持っていて、下痢を起こしたり、発熱させたりします。

このように糞便検査では腸内細菌の様子を確認することができるので、腸内細菌の動きが悪くなったり、
悪玉菌がたくさん繁殖している場合は、腸内環境を整えるような整腸剤や消化に優しいご飯に切り替える必要があります。

寄生虫感染の有無

じゃあ、次は寄生虫に関するお話しです。
糞便検査の本領が発揮されるのはこの寄生虫の検出にあると考えています。

犬や猫に感染する寄生虫はこういったものがあり、これらが糞便中に観察されないかに注目して検査を進めていきます。

左の写真は寄生虫の卵で、野良猫さんが結構持っています。
こういったものというのは例えば、公園の砂場で野良猫がうんちしたのを、散歩でワンちゃんが誤って食べてしまったりして感染が成立してしまいます。
健康状態が良い犬とか猫であれば、あまり最初の方は症状が出ないことが多いです。

なので、ワクチンを打ちに行った際に、血液検査や超音波検査だけをしていると意外と見落としてしまいます。

ここでポイントとなってくるのが、ワクチンを打ちにいく時にフィラリアの予防薬を一緒に買われる飼い主さんが多いと思います。

フィラリアの予防はもちろんされると思うのですが、
こういったお腹の虫に対する予防薬を選択するかって糞便検査をしておかないと分からないと思います。

こういった意味でも健康診断の時に糞便検査はしっかり一緒にしてもらった方がいいんじゃないかなと思います。

ちょうど前回の動画で、予防薬の選び方に関する動画をアップしています。
概要欄にリンクを貼っておきますので、気になる方はそちらもチェックしてみて下さい。

ウンチを持参する際の注意点

次はうんちを持参する際の注意点についてお話ししていきたいと思います。

きちんと糞便検査を行うためには適切なサンプルが必要なので、うんちをどのように持ってきて頂くかは割と重要なんですね。

では健康診断の時にうんちをどんな感じで持っていけば良いのでしょうか?
こんな疑問が浮かんでくるかと思います。

これに関してはウンチを持参する際に注意すべきことを3つに絞ってお話ししていこうと思います。ここでお伝えしたい大事なポイントはこの3つです!

持参する際のポイント3つ
  1. できるだけ新鮮なもの
  2. 量は指第一関節分
  3. 染み込まない密閉容器

できるだけ新鮮なもの

まずはできるだけ新鮮なものということですが、
これは腸内細菌の動きなどを評価したいので、なるべく採れたてのうんちの方がリアルタイムの腸内細菌を評価できるので好ましいです。

理想は3時間以内のものが良いと言われています。

時間が経ってしまったうんちでは細菌が死滅していることが多く、顕微鏡で観察しても動きが悪いと誤って評価してしまいます。

ただどうしても、生活習慣やその子、その子によっては朝ウンチしない子とかいるので、
そういった場合は夜にしたうんちを冷蔵保存しておくと細菌が死滅することなく、ある程度保存がききます。

これは絶対して下さいというわけですので、
衛生面のこともありますから、うんちを冷蔵庫に入れたくないという方は無理にする必要はありません。

動物病院に持っていく時は、いつしたウンチなのかというを受付でお伝えしておきましょう。

量は指第一関節分

次は量についてですが、持っていくウンチの量は指第一関節分ぐらいで十分です。

たまに大量の巨大なうんちを持って来られる方はいますが、
使うのは本当にわずかな量で良いので、お持ちして頂くのも大変だと思いますので、
そんなにたくさん持って来なくても検査はできます。

冷蔵保存の話もそうですが、
うんちを丸々冷蔵庫入れるとなると臭いすごいことになると思うので、
第一関節分ぐらいのうんちだけ取って、何か容器に入れておくと保存しやすいかなと思います。

染み込まない密閉容器

容器は動物病院に言えば、便検査用の容器をもらえることも多いです。
基本的には乾燥しないように、タッパのような密閉できる容器に入れてもらうと良いかなと思います。

そしてもう一つ重要なのが、
たまにキッチンペーパーやペットシーツに包んで持って来られる方がいますが、
そういった水分が染み込んでしまうようなものを一緒に入れて保存するのはあまり良くありません。

というのも、
病院に持ってきて頂いた頃にはうんちの水分が全部取られていてカピカピで評価できなくなっていることがあるからです。

そのため、
ラップのようなもので包んでもらったり、タッパに直で入れておいてもらった方がより正確な検査ができるかなと思います。

異常が見つかった時の対処法

では最後になりますが、
こういった糞便検査によって異常が見つかった時の対処法についてお話しします。

今回はあくまで病気ではなく健康診断でたまたま見つかったことを想定してのお話になります。
何かお腹を壊していたり、体重がどんどん減っていっているなどの症状がなければ、
整腸剤を使用したり、消化に優しいご飯に変えたりして数日後に再検査を行います。

寄生虫の感染が疑われた場合は、駆虫薬などを使用し、寄生虫を死滅させる必要があります。

抗生剤は使ってはいけない

間違ってもやってはいけないのは、悪玉菌が増えているからといって、抗生剤を使うことです。
抗生剤は悪玉菌だけでなく、善玉菌もやっつけてしまいますし、それだけでなく耐性菌が作られてしまうというリスクもあります。
少なくともたまたま見つかった無症状の犬や猫に行うような治療ではありません。

耐性菌のリスクについては別の記事で解説しています。

最後に

ではまとめにいきたいと思います。

まとめ
  • 糞便検査では消化状態、細菌叢、寄生虫を調べることができる
  • できるだけ新鮮なもので、量は指第一関節ぐらい、容器は吸水性のない密閉容器で持参する
  • 異常が見つかった場合は抗生剤は使用せず、マイルドな治療を行なって、数日後に再検査

今回はこれからワクチンや健康診断が始まる時期ということもあって、健康診断の一環として糞便検査がオススメですよというお話をしました。

ウンチというのは胃腸の環境をダイレクトに反映しており、ウンチを観察することで、動物の健康状態は把握することができます。
意外と糞便検査をされていない飼い主さんが多いと思うので、ぜひ健康診断に行かれる際はウンチを持参されてはどうでしょうか?
糞便検査によって病気の早期発見に繋がれば嬉しいです。

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