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ストレスで下痢?? 犬のIBS(過敏性腸症候群)は存在する?

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はじめに

ワン太

(….ギュルルルル)
はぁ…最近ずっとお腹の調子がおかしいんだよね

オタ福

あらら、ワン太君どないしたん?
なんか変なもんでも食べたん?

ワン太

いや特に変なもの食べた記憶はないよ。
この前、お母さんに動物病院に連れて行ってもらったんだけど、「検査上、明らかな異常はない」って言われたんだ。

オタ福

うーん、それは心配やなぁ。原因はなんやろうね?
下痢するタイミングとかなんか共通点はない?

ワン太

強いて言うなら、留守番した時とか雷が鳴って怖い時に急にお腹がギュルギュルいって、お腹が痛くなる

オタ福

なるほど、人のIBSみたいやなそれ

ワン太

アイ..ビー..エス..?? なんなのそれ??

オタ福

ストレスがきっかけでお腹が痛くなる病気やで
人の病気やねんけど犬でも一応、似たような病気があるとは言われてる。
ただ、犬の場合その存在自体も怪しいけどな(笑)

過敏性腸症候群(IBS)ってなに?

過敏性腸症候群(IBS)』は人間の病気であり、獣医師の私があまり話すのも良くないと思うので、ここではサラッとご説明します。

IBSはどんな病気??
過敏性腸症候群は複数の因子が絡んだ腸管の機能不全であり、下痢や便秘に関連した腹痛が特徴的です。

何が原因で起こる??
主な原因として強いストレスなどの精神的な問題が素因となっていると言われており、知覚過敏状態のように痛みが感じやすくなっています。また、急性の細菌性胃腸炎に続発して発症することもあります。

診断方法は?
ローマⅢ基準と呼ばれる診断基準を用いて診断していくらしいです。

誤った情報書いちゃうと怒られちゃうので、
人のIBSについては引用先のHPをご参考下さい↓

IBSの患者さんでは、脳から腸に向かう信号と腸から脳に向かう信号の両方が強くなっています。ストレスは脳から腸に向かう信号を強くし、自律神経・内分泌を介して消化管運動を変化させます。食物はその種類と摂取方法によっては腸から脳に向かう信号を強くし、知覚過敏状態を引き起こします。また、ある種の細菌は、腸にごく軽度の炎症を起こしたり、粘膜を弱らせてしまうことでIBSを起こりやすくしていると考えられています。

日本消化器病学会ガイドライン HP

犬の原因不明の下痢

まずは呼び名を決めよう!

この原因不明の下痢を参考図書では『idiopathic LI diarrheal syndrome』と記載しており、論文を探しましたがヒットしなかったので、この書籍でしか呼ばれていない名称のようです。
直訳すると、『特発性大腸性下痢症候群』みたいな感じになるかと思います。

このサイトでは”特発性大腸性下痢症候群(仮)”と勝手に命名しておきます。他のところでは通用しない呼称なので、くれぐれもお気を付けて!

特発性大腸性下痢症候群(仮)とは

特発性大腸性下痢症候群(仮)とは犬で見られる疾患であり、人のIBSの仲間のようなものとされています。便秘や鮮血便よりも粘液便やテネスムスがよく見られるのが特徴です。

ただ、IBSという病気はストレスと連動して、発症する病気であるため、犬のように言葉が話せない動物に対して、人のIBSを関連づけるのは難しいと考えるべきでしょう。なので、結論として現時点で犬のIBSは存在自体否定的です。

どう診断するのか?

犬では診断基準は設けられておらず、犬が本当にIBSで苦しんでいるかははっきりしません。

そのため、基本的には感染症の存在や病理組織学的な腸炎所見、腫瘍性疾患などあらゆる原因を除外した上で下痢をしている症例に対して仮診断することがあります。
ストレスがかかる状況の時でよく下痢する場合はストレスと下痢が関係”しているかも”しれません。あくまで”かも”程度にしか言及できないのが現状です。

治療法はあるの?

特発性大腸性下痢症候群(仮)の犬では可溶性繊維を多く含んだ消化性の高い食事に反応することがあります。でも、これって『食事反応性腸症』ではないかと思ってます。
慢性下痢の症例では低アレルゲン食や消化性の高いご飯に変えると下痢が落ち着くことがよくあります。このように明らかな原因がなく、食事の変更によって下痢が治る病気のことを『食事反応性腸症』と呼びます。

それ以外にストレス性を落ち着かせる目的で抗不安薬や鎮痙薬などの使用が検討されることもあります。
ただし、これらはプラセボ効果(飼い主の思い込み)による改善の可能性が高いと言われており、決して治療効果を保証するものではありません。

IBSのようにストレスによる下痢・腹痛の可能性もあるため、ストレスや不安を解消させてあげることで、状態の悪化を防ぐことができるかもしれません。

まとめ

今回は人の病気である過敏性腸症候群を題材に、それと類似しているとされる『特発性大腸性下痢症候群(仮)』についてご紹介しました。特発性大腸性下痢症候群(仮)はこれといった原因となる所見がなく、下痢が起こる状態を呼び、治療法もかなり曖昧な内容となっています。

下痢の症例に対してはいきなりストレスを考えるのではなく、しっかりと検査で除外診断を行い、ストレス以外の大きな病気が隠れていないかを調べることが大切です。
犬が感じるストレスと下痢に関係性があるかは今後研究がされていくことを期待します。

オタ福

というわけで、まだはっきりと分かってないし、現時点ではIBSという病名を動物には使わん方が良さそうやな。

ワン太

うん。でも、なんかストレスと関係してる感じしてきたよ。

オタ福

そうやな。
解明されてないだけで、関係ありそうな感じもするわ。
まずはしっかり除外診断してから、消化に良いご飯に変えてみようね!

本記事の参考図書

Stephen J. Ettinger ; Edward C. Feldman ; Etienne Cote : Textbook of veterinary internal medicine. 8th ed., ELSEVIER, 2017, p1589-1590

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